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福岡家庭裁判所 平成5年(少)2795号

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

(1)  福岡地方裁判所平成5年(わ)第397号事件(当庁平成5年少第900号事件が福岡地方裁判所に公訴提起されたもの)記録中の同裁判所の判決原本の「罪となるべき事実」欄記載の第1、第2の事実

(2)  平成6年少第151号事件記録中の司法警察員作成の平成6年1月18日付少年事件送致書「犯罪事実」欄記載の一の(一)、(二)、三の事実(編略)

(3)  同年少第306号事件記録中の司法警察員作成の同年2月14日付追送致書「犯罪事実」欄記載の二の事実(編略)と同一であるから、これをここに引用する。

(法令の適用)

上記(1)の第一につき、刑法60条、220条1項

第二につき、同法60条、204条

同(2)の一の(一)につき、刑法60条、235条

(2)の一の(二)につき、同法60条、246条1項

(2)の3につき、道路交通法118条1項1号、64条

同(3)につき、刑法60条、毒物及び劇物取締法24条の3、3条の3、同法施行令32条の3

(処遇の理由)

少年は、当裁判所において、窃盗・道路交通法違反事件につき平成元年10月2日保護的措置を経て不処分決定を受け、占有離脱物横領事件につき平成2年5月8日保護観察に付され、窃盗・毒物及び劇物取締法違反事件につき別件保護中を理由として平成3年5月24日不処分決定を受けたが、一方中学3年の夏以降シンナー吸入を続けてこれへの依存度が深くなり幻覚を体験したこともあり、また、その頃暴定族「甲」に加入して平成2年1月頃そのリーダーとなり、その間暴走行為に参加し、その後平成4年1月暴走族をいわゆる引退し、以後OBの立場にあった。少年は、それまで土木作業員として約3か月間働いたほかは遊びたい一念とわがままから殆ど働かず、落ち着いた生活の設計もないままの生活を続けたため、道路交通法違反・恐喝未遂・窃盗等の事件につき平成4年1月28日中等少年院(一般短期処遇勧告)に送致され、同年6月1日少年院を仮退院して保護観察下に入り、タイル工の仕事をしたが、その後僅か1か月余りの同年7月18日友人と共に軽自動車を窃取し、その事件につき観察措置をとられたうえ、(なお同月18日、19日、22日の普通乗用自動車窃盗事件も併合されて)同年10月2日改めて保護観察決定を受け、内装作業員として働いていたが、同月21日には普通乗用自動車の無免許運転をした(少年法20条により検察官送致となった。)

その後も行状はおさまらず、平成5年3月16日夜間、少年は年下のA、C、少年の弟I・N、Bらと遊んでいるとき、暴走族「甲」を無断で脱退したD(16歳)に暴行を加えることを少年から言い出して5名共謀のうえ、翌17日午前2時半頃Dが同棲しているF2階に上がりこみ、同2階で少年が真っ先にDに怒鳴ったうえ同人の大腿部を数回蹴り、同人が逃げないように襟首を掴み、CにおいてDを自分らの自動車のところまで連れて行き、少年がDに対しトランクに入るように命じ、いやがるDを共犯者らと一緒に脅かして無理やり自動車のトランク内に閉じ込めたまま約20分間車を疾走させ約8.2キロメートル離れた乙所まで連れて行き、同所でDを取り囲み、少年が真っ先にDの頬を手拳で2、3回強く殴打し、同人の大腿を2、3回蹴りつけるなどの暴行を加え、他の4名も共に同人に対し3、40分間にわたり暴行を加えて傷害を負わせるという本件(1)の非行をした。少年は、本件(1)の非行の共犯者中の最年長者であっただけでなく、共犯者らに対して強い影響力を有し、更にDに最初に暴行を加えたのが少年であったことからみて、本件(1)の犯行において主導的な役割を果たしたとみられる。

少年は、家庭裁判所においては本件(1)の非行事実を否認し、平成5年4月23日の当裁判所における審判廷においても、Dに対し暴行を加えることにつき他の者らと話したことはなく、その意思を通じ合ったこともなく、F方2階に自分は上がらず、したがって2階でDを怒鳴ったり蹴ったりしたことも襟首を掴んだこともなく、Dにトランクに入るように言ったこともなく、乙所でDを蹴ったり殴ったりしたことも全然ないと、一貫して否認を通した。

上記のとおりであって、少年が保護処分による指導教育に従って行く見込みがなくて保護処分不相当であり、かつ刑事処分相当事案であるとも認められたので、当裁判所は平成5年4月23日少年法20条により本件(1)の事件を検察官に送致する旨の決定をしたところ、同年7月13日福岡地方裁判所で少年に対し、懲役10月以上1年以下に処する旨の実刑判決が宣告され、同判決に対し控訴がなされ、同年11月1日福岡高等裁判所で原判決の事実認定を肯認し少年の責任の重大さを指摘したうえ、原判決を破棄し、本件を福岡家庭裁判所に移送する旨の判決が宣告された。

上記地方裁判所の公判においては、少年は、「家庭裁判所では一貫して否認したが、公判では真実を述べ、公訴事実を認める」旨述べたが、そこには、家庭裁判所では真実を隠してうまく否認し通そうとした態度がうかがわれるのである。

少年保護事件においても、少年は自己を防御することができることはいうまでもなく、真実犯罪をなしている場合に送致事実を否認することも少年の自由であろう。しかし、上記のように、家庭裁判所において、調査においても審判においても積極的に完全に否認することは、少年の将来の生き方につき問題を残すと思われる。少年保護事件の手続・処理を通じて流れている理念は、非行をした少年が、自己の行動をありのまま見つめ、素直に反省し、内省を深め、それを基本とし出発点として、将来の生活態度、生き方を変えて行き、再び非行へ赴かないようにすることにあり、真実非行をした少年が、家庭裁判所においては真実から逃げ通して責任を巧みにのがれて行くということは、当該少年が将来そのように巧みに責任回避しながら生きて行く虞れが大きく、それでは少年の健全育成という少年法の目的・精神から遠く離れてしまうことになる。その観点から見ると、少年が前記20条決定前にとった態度と考え方は残念というほかない。

上記高等裁判所の判決に基づき平成5年少第2795号事件として再度当裁判所において係属し、当裁判所は同年11月12日審判を開いた。少年が自宅に帰れば不良交友関係が復活する虞れが極めて大きかったので自宅に帰すことは到底できない状況であったところ、同日の審判直前に、付添人の申し出による社会資源として、少年の母方伯母G及び母方叔母Hの2人が進んで出頭したので、両人を審判廷に出席させてその意向を聴いたところ、2人とも今後必至になって少年の指導に当たることを誓ったうえ、その各家庭状況からみても期待をもつことができると認められたので、当裁判所は、自宅に帰らないこと、従前の交友関係を断つこと、もちろん決していかなる非行もしないことを少年に誓わせ、少年を試験観察に付した。少年は、同試験観察決定の日から伯母G方で生活し、同年11月29日から○○工務店に就職し、その後叔母H方で生活し、○○建設で型枠大工として働いていた。しかしながら、同試験観察決定から1か月余り経った平成5年12月半ば叔母HとけんかしてH方を飛び出し、自宅に帰り、上記仕事もやめてしまい、以後仕事をしないままで過ごした。自宅に帰ったところ、案の定従前の遊び仲間が少年宅に遊びに来て不良交友が復活し、以前暴走族「甲」の関係で知り合ったI(17歳)との共犯で平成6年1月14日及び17日に本件(2)、(3)の各非行をするに至ったものである。

以上の経過、殊に試験観察決定後の生活態度・行状・忍耐力の欠乏、それに鑑別結果通知書によって認められる少年の資質、性格、行動傾向、生活歴・非行歴・交友関係、保護者の保護能力・保護態度などを考慮すると、少年の再非行を防止し、将来健全な生活をするようにこれを育成するためには、少年院に収容したうえ矯正教育を受けさせる必要があると認め、少年を中等少年院に送致することとする。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 久保園忍)

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